こぼれ話

2018.10.06

忘れがたい喜び~安室ちゃんの引退

奈良に青丹座というシアターがあります。

http://www.aoniza.com/

少人数で貸し切れるミニシアターで、オーナー権を購入することにより、身内でライブを楽しんだり、上映会をしたりすることができます。

巨大なスクリーンと最新の音響設備。ゴージャスなソファ椅子が用意されていて、映像ファンでなくても訪れるべき施設です。

ここで安室奈美恵の引退コンサート上映会があるということで、すっ飛んでいきました。

安室奈美恵。

70年代に生を受けたものなら、彼女のメイク・ファッションをことごとくコピーしたアムラー現象に遭遇しなかった人はいないくらいではないでしょうか?

歌う曲は小室サウンド。

勢いがあっておしゃれでいつも最先端で、でも歌詞がうすっぺらな彼女の小室音楽を、ただ耳障りのいいものとして聞いていました。

なので昔から安室ちゃんが好きだったの?と言われたら、そうでもなかった、と答えます。

本格的に彼女が気になりだしたのは、20歳で結婚した彼女がその後離婚し、腕にタトゥーを入れたあたりからです。

息子さんの名前であるHARUTOと刻んでいたのは知ってる人が多いと思うのですが、その下には英文が刻まれていたそうです。

JUN.30 in 1950
my mother’s love live with me
Eternally in my heart
R.I.P
MAR.17 in 1999

これは直訳すると

1950年6月30日
母の愛は私と一緒に生きている
私の心の中で永遠に
rest in peace(安らかに眠れ)
1999年3月17日

 

1950年6月30日はお母さまの生まれた日

1999年3月17日はお母さまが亡くなられた日です。

 

タトゥーはおしゃれ目的で入れる人が増えてきましたけど、彼女のタトゥーは明らかに決意表明です。

強く生きていく。必ず息子を守る。そういう決意表明。

 

テレビに出ている彼女を見るたび、陰か陽かで言えば、陰な人だなと思っていました。

これは別にいい悪いでなく、外に出て行くより内に向かっていく人なんだろうな、という意味です。

舞台に立ち、歌を歌いダンスを踊る。

そういうパフォーマーという職業って、つい華やかで目立つことが好きな人が選ぶ仕事に見えがちなんですが、

安室奈美恵はそういうわけでもない。

ただ、好きで得意なことを仕事にしたというような、タフでストイックなものを感じます。

今回のコンサートの模様も、彼女自身のパフォーマンスと同じくらい、バックダンサーや照明、音響、会場の装置そのものまで

プロの仕事を感じるものでした。

もはや安室奈美恵すら、舞台装置の一部のようにすべてが一体となっている。

あそこで主役なのは会場に来ているお客さん、そして映像で見ている私たちです。

そのために安室奈美恵がいる、と思えるくらい作品として素晴らしいクオリティでした。

 

引退を決意した安室奈美恵がタトゥーを消して、今日見た両腕はまったく痕跡がわからない状態でした。

ある種の目標に達して、ひとつ肩の荷を下ろした証拠ならファンとしてこんな嬉しいことはありません。

日本中といっていいくらいの人に注目されて、世界的な仕事もして、でも彼女自身の等身大で色々決意して

進めたりやめたり止まったり。

こんな優秀な人が同世代にいてくれるだけで大きな喜びです。

日本に安室奈美恵というスターがいて、時代のアイコンだったという経験はさらに忘れがたい喜びです。